「~~~なんてことすんの! バカめ!」
「……在義さんに聞いてはいたけど、口悪くなったなあ」
「誰の所為だと! ってか父さんとは普通に連絡取ってたのか!」
「……それはまあ」
「うわーん! 父さんまでグルだったあー!」
本気で騒ぐ私の頭に手が置かれたので、恨みがましい瞳で睨んでやった。
硬直している間に流夜くんに攫われて、駐車場に停めてあった車に放り込まれた。
硬直が融けたのは今さっき叫ぶ直前で、気づいたらしっかりシートベルトもしめてあった。
「もう、いいかな」
「………なにが」
流夜くんの声は穏やかなのに、私の心は収まりきらない。迎えに来てくれるくらいなら……。
「勝手にいなくなっちゃう人のになんかならない」
ふいっとそっぽを向く。
「……また気が強くなったな」
悪態をつかれても、流夜くんは楽しそうだった。
二年前と少しも変わらない横顔を盗み見て、内心唸った。くそう、やっぱりすてきだ。
……ちゃんと前みたいに接したいのに、大すきって連呼して抱き付くくらいしたいのに、二年の間で自分は変わってしまったのだろう。
正直になるって、どうするんだっけ? えーと……。
…………………………。
「……お花、ありがとう」
「うん?」
「資格、取れた日……」
「ああ。自分から離れた以上、出しゃばったら駄目とはわかっていたんだが……どうにも、黙ってはいられなくてな」
「そんなことしておいて離れてるなんて意味がわかりません」
「違いない」
流夜くんがふっと軽く笑った。
この笑い方は、どこだっけ? ……ああ、蒼さんと初めて逢った日の笑い方だ。
それから、何度か見た。気の置けない人といるときの。
……流夜くんは全然変わっていない。好きになった日の、そのままだ。