「ふゆは斎月に妬いてるんだ。一緒に育った俺らより、斎月の方がりゅうに近いって言われてるから。俺も複雑ではあるけどね。斎月はりゅうが、初めて家族の呼称で呼んだ人間でもあるから」

「ああ、なるほど……」

「咲桜ちゃんは? 斎月のこと、嫌じゃないの?」

「何と言うか……斎月はすごすぎて嫉妬の対象から外れてしまいました。流夜くんとも兄弟認識だとはわかったので、女の子として意識するのも無意味だなあ、と」

「賢明だね。ふゆもそんくらいに考えてくれたらいいんだけど……」

「降渡さん、大変ですね。……あ、すみません」

この件に関しては完璧に抑え役でしかない降渡さんに同情していると、スマートフォンがメッセージの着信を告げた。開いてみると斎月からだった。

『たぶんもうすぐ琉奏さんがそっち行きます。頑張ってください!』

「え……」

あの日――宮寺先生の口から本当のことが聞かれた日以来、宮寺先生は私の前に現れてはいなかった。

医者という立場では尊さんがいたから、私から接触することもなかった。

宮寺先生が、近くにいる。

「………――――っ」

「え、咲桜ちゃん?」

「すみません! すぐ戻ります!」

降渡さんに言い置いて店を飛び出した。

――ところで、《白》の敷地に足を踏み入れたばかりの宮寺先生と目が合った。

「―――」

宮寺先生の視線が硬直した。構わず突き進む。猫の鈴のような音が、扉が閉まったことを教えた。

「――――」

「逃げないでください、宮寺先生。先生を責めたくて出て来たんじゃありません」

「……華取さん、その申し訳

「すみませんでした」

謝りかけた宮寺先生を制して、頭を下げた。