「………」
頼は無言で斎月を睨む。反抗しない……無意味だと、本能的に悟っているとかだろうか。
斎月はすぐに頼にカメラを返した。データ消去早っ。
「あの、大和、さん? 神宮と大学の同期ってどういうことですか?」
先輩、まだ敬語が抜けなかった。年下って信じてもらえてないな……。
「流夜兄さんがアメリカ留学してるとき、私も同じとこにいたんです。私、生まれ育ちがアメリカなんで、ちょっと早めに大学入ってたんです」
「本当に男だと思われて女子生徒に襲われて、女性恐怖症が今も治らないんだよねえ」
え。吹雪さんも知っていた? 流夜くんも斎月も、話していないようなこと言っていたけど……。
ああ、流夜くんたち幼馴染の間で隠し事は意味がない、だったっけ。
「吹雪さん」
「ん? 僕がバラさないとでも思った?」
……なんだか吹雪さんの性格がいつもと違うな……。攻撃的と言うか……。
「……ふ、降渡さん? 吹雪さん大丈夫ですか?」
今にも血管が切れそうな顔の吹雪さんが心配になって、降渡さんに聞いた。
「あー、吹雪は斎月が苦手なんだよ。周りの人に、斎月って俺らより
「降渡! この偏屈に有利になることを言うな!」
「別にそれ、私はこだわないんですけどね」
「その余裕っぷりがムカつくんだよバーカ!」
ふ、吹雪さんが小学生の喧嘩みたいなことを言っている。しかし斎月はちらりとも相手にしていない。
「もう出てけお前! 今は咲桜の勉強中なんだよ!」
犬を追い払うように手を振る吹雪さん。さ、さっきから言動が子どもだ。
「んー、わかりました。咲桜姉様、またこっち来たら連絡しますので、お友達も一緒に遊んでください」
「あ、うん。勿論」
「では、お騒がせしました」
斎月は綺麗な礼を取って、ざわついた空気も一緒に持って行くように店を出た。
「……………雲居、春芽」