「あのね、斎月だけでかなりすっごいバカみたいに面倒いハナシなんだから、余計な誤解混ぜないでよ。って言うか斎月、お前のお兄さんから、ここ出禁とかされてんじゃないの?」

「お兄さん?」

先輩が呟く。

け、決定的な一言が斎月の口から言われてしまうのか……。背筋が戦慄した。

斎月は年齢にそぐわない妖艶な笑みを見せた。

正座させられているくせに。

「兄さんの言うことを私が聞くとでも?」

「むしろ兄さんの言うことしか聞かないから、お前が現場に出ると流夜も呼ばれるんだろうが。お前は災害みたいな奴だからさ」

「あ」

……吹雪さんが言っちゃった。私が思わず声をもらすと、案の定先輩から驚愕の声が聞こえた。

「お兄さんて、神宮? ってことはあの神宮の弟……女装男子なのか⁉」

「そこなの⁉」

反射的に私がツッコんだけど、先輩はワナワナ震えながら斎月のことを見ている。

斎月は先輩の驚きに首を傾げている。

「元・男として育てられてた正真正銘女子です」

「はっ。お前が女子名乗るのって厚かましいよね」

「吹雪さん、今の言い方は赦せないよ」

「……ごめん」

指摘した私に、吹雪さんがバツが悪そうに謝った。

それを見ながら、愉快そうに苦笑する降渡さん。斎月は拍手する。

「吹雪さんに謝らせられるなんてさすが姉様。流夜兄さんの奥方に文句なしですね」

「ちょ―――――――――っと待ったあああああああ!」

笑満から盛大なストップがかけられた。

「姉様って何⁉ 先生も出てくんの⁉ 現場ってなにだし元男なの⁉」

唯一、斎月の存在に対して何の情報も持たない笑満は、情報の大洪水を起こしているようだった。

笑満が叫んだとき、斎月の肩が大袈裟ではなく跳ねたのを私は見ていた。

……斎月の女性恐怖症って本当なんだ……。

あ、びくびくしてる。