「たぶん衛くんが言いたかったのは、十三に感化されろってことかなって思うんですよ」
「……じゅうさん? って、初代のPクラスのことですよね?」
笑満が疑問を返す。
「はい。正しくは初代ではないんですけどね。流夜くんたちとは、向こうが中学生の頃からの友達ですし、影響力の大きな子がたくさんいましたから、流夜くんたちの考え方のどこかにも、『私たち』がいると思うんです」
「あ――それ、吹雪さんが言ってました」
「ですか。つまりはそういうことですね」
「……どういうことですか? 吹雪さん、その、生き方は自分で選んでいいみたいなことは言ってましたけど……」
「うん。『私たち』流に言うなら、『運命は自分で決めていい』です。みんな色々あって、用意された運命や生き方なんかまっぴらごめんだ、って子ばかりだったんです」
「………」
「だから、過去のことなんか一切関係なく。咲桜さんの生きる道は、咲桜さんが決めていいんです。――決めるべきなんです。咲桜さんの命は、咲桜さんが決める運命を生きるんですから」
「………運命」
「そういう言い方が苦手だったら、他の呼び方でいいんです。なんでもいいんですよ。自分が決めたものだったら。自分の命は自分だけのものではないですけど、主導権――命を導けるのは自分です」
「………」
「『私たち』の影響って言うのはたぶん、『自分が納得出来るものだったら背理でもなんでもいい』っていうとこだと思います」
「………」
「背徳だろうが非道徳だろうが、多少正しくなくても、捕まらない程度ならいいんですよ」
『………』
きょ、極論すぎないか……? あっけらかんと言う尊さんは、顔と言葉が合っていない。
「『私たち』はそういう風に生きることを決めました。それだけですよ」
そう言って尊さんは優しく微笑んだ。
言葉の内容とかけ離れているほど穏やかに。
正しくない生き方。清々しいほど濁った生き方。
義の心の父のもとで生きていた私には、遠い生き方かもしれなかった。
でもその生き方を――恋う人たちは、していた……。
その先で、流夜くんは――――。