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「お久しぶりです、咲桜さん、笑満さん」
「……お久しぶり、です」
「お久でーす」
病院のカフェテリアで、私と笑満は尊さんと待ち合わせていた。
尊さんの仕事は忙しく、診察の間に時間を取ってくれたのだった。
流夜くんがいなくなったショックの大きい私は、この前みたいにたまに元気になるんだけど、まだ凛と立ってはいられなかった。
「どうぞどうぞ。ここまで来てくれてありがとうね」
尊さんが、向かいの席に私たちを誘導する。
「いいえ。こちらこそ急にお時間作ってもらって、ありがとございます」
笑満が軽く頭を下げると、尊は「いいえー」と朗らかに笑った。
「流夜くんのことなんですよね?」
「……尊さんはっきり言いますね」
笑満の方が一瞬返事に詰まった。
「雑談するより、咲桜さんにはいいのかなーと思って」
笑満に答えて、尊さんは私を見た。
「……尊さん、流夜くんがどこにいるか、知ってるんですか?」
私の細い声が揺れながら出た。
「はい。知っています。衛くんに聞きました」
「……教えてくださいって言ったら……ダメ、ですよね、
「流夜くんは、犯研にいます。城葉にある、犯罪学研究所です」
「え……教えちゃっていいんですか?」
笑満が驚いて訊く。そんなにサラリと。
「別に口止めされてないですし。それに、流夜くんは籍を犯研の研究員――なんか室長とか押し付けられてるみたい――ですけど、一所に留まらずにいるようで、犯研に逢いに行ってもいませんから」
「……ぬかりないな、先生」
私の隣の笑満が呟いて舌打ちした。