「……この前は……私の方が……一緒にいちゃいけない、理由だったから……」
自分の血筋を、初めて知った。
一緒にいてはいけないと、一緒にいては、流夜くんを傷つけるだけだと思った。恨まれこそする立場だと。
「……先生ってさ、咲桜のことほんとーに大事だよね」
「……そんなんだったら、置いて行かれない」
「言ったんでしょ? 『今の咲桜の』、って。それって、先生の方の問題じゃなくて、咲桜の方に変わるべきところがあるとか、そういう意味にもならない?」
……変わる?
――決定的に、変わらなくちゃいけない。
急に、前に吹雪さんが言っていた言葉が脳裏によみがえった。
「……旭葵くんが教えてくれたんだけどね?」
「え? なんで出てくんの?」
「ばれてたらしいよ、先生と咲桜が付き合ってる上に婚約者だったの」
「………ええええ⁉」
「というか先生が盛大にばらしたらしい……」
「何考えてんの⁉」
何も教えられてないんだけど⁉ 怒りが追加された。
「旭葵くんならまだ安心だけど……何言ってたの?」
「それが……夜々さんと先生がバチバチしてるところに居合わせちゃって、そのとき二人とも言ってたんだって。『先生の側に咲桜を巻き込まない』って。夜々さんが先生にそう脅すのはわかるけど、先生も……自分の、警察とか犯罪学とかの世界には、咲桜を巻き込むつもりはないって。……はっきり言ってたんだって」
「―――――」
「それで……先生、まだその思いが変わってないんじゃないかな?」
「………」
流夜くんは私に、仕事のことは何も話さない。
斎月のことは弟とすら称して、全権信頼の関係のようなのに。
私は流夜くんの仕事に、踏み込んだことはない。
在義父さんの仕事にも深入りしないよう育てられてきたから、そのままに倣(なら)っていた。……かもしれない。
斎月ほどとはいかない。でも、私からそちら側へ、行けば―――
「咲桜、提案なんだけど、今度尊さんのとこ行ってみない? 衛さんも言ってたじゃん」
……まだ、一人で立っている力はなかった。