「……夜々さん、怒ってないんですか?」
「今回は、神宮さんから説明を聞いているからね」
咲桜ちゃんがまた閉じこもってしまった。
春休みに入って二日。咲桜ちゃんは家から一歩も出ていない。
笑満ちゃんが理由を聞いたら、『流夜くんに捨てられた……』と悲壮な顔で言ったらしい。
そのまま部屋に引きこもっている。
在義兄さんに言って家に入れてもらった笑満ちゃんとわたしは、咲桜ちゃんの部屋の前で話していた。
前回とは……大分事情が違っているようだわ。今笑満ちゃんとわたしは、咲桜ちゃんを迎えに来る人を待っているのではない。
目の敵にしていた神宮さんが、咲桜ちゃんには行き先も告げずにいなくなってしまった。
大事な咲桜ちゃんがそんな目に遭わされて、わたしは怒り爆発かと思っていたんでしょう。でも、
「今回ばかりは、神宮さんの言い分に納得してしまったの」
「……納得?」
「ええ。……咲桜ちゃんが、自分で気づかないといけないことだから」
「……ですか」
笑満ちゃんは、夏島くんとの交際をご両親に認められて、順調のようね。
……自分が安定しているだけに、悔しさもあるんでしょう。
「取りあえず、咲桜を部屋から出さなきゃですよね。無理強いは出来ないけど……」
「そうね……。あ、あの子のところ行ってみるのはどうかしら?」