「咲桜」

「ん? どうしたの?」

「―――………」

「流夜くん?」

華取の家のリビングで、夕飯の準備に取り掛かった私に呼びかけて、でも何か言いたげに視線をさまよわせている流夜くん。

恋人を一度終えて、婚約も解消してから、私が流夜くんのところへ訪れることはなくなった。

私の薬指は変わらないけど。行きたい気持ちはある。あそこなら確実に二人きりになれる。でも。

まだ、考えている途中だ。中途半端な関係は嫌だ。

お互い納得した形で――傍にいられる道を、選びたい。

少なくとも私はそう思っていた。

流夜くんと美流子さんが実の姉弟ではなかった。

それは、流夜くん自身も生家のある町に訪れて、戸籍で確認をとってきた。美流子さんは養子とされていた。

一つ、問題は解消されたかもしれない。

でも、もっと大きな……問題は、転がったままだ。

宮寺先生が調べたという、DNA鑑定の、結果の一つ。