「……生まれついた天命はある。僕にも、咲桜ちゃんにも。けど、自分の生きる道は、自分の運命は、自分で決めていいんだ」

力強く。

吹雪さんは私に、微笑んだ。

「ふゆきさん~……」

「ここで抱きしめたら流夜に怒られちゃうから、流夜のところまで、一人で涙を止める。……出来るね?」

こくこくと、何度も肯いた。

「それから……笑満ちゃんは知ってたんだよね?」

「あ、はい。笑満と夜々さんは全部話してます」

「それで、こんなこと言われなかった? 咲桜ちゃんの分まで自分が産むから、みたいなこと」

「吹雪さん名探偵ですか⁉ 言われてますっ」

「やっぱりね。僕の知ってる人にもそういう考えの人がいてね。実際双児を年子で産んだんだよ。二年間で四人の子どもの親になった。笑満ちゃんだったら有言実行しそうだよね」

「す、すごいですね! お友達さん大すきなんですね」

「そりゃあもう。旦那や彼氏が妬くほど仲いいよ。僕もよく子どもたちと遊びに行ってるから、赤ちゃんの相手上手くなったよ。笑満ちゃんでも咲桜ちゃんでも、子ども産まれたら頼っていいよって言えるくらいには」

毒舌しか吐かない吹雪さんらしくない言葉だった。

でも、心からその言葉をかけてくれているのがわかる。

私にとって吹雪さんは、不思議な存在だった。

ふわふわしているようで一番頑固。のらりくらりなのに筋は一本。

軽くはないバックボーンがあるから、春芽吹雪はこういう生き方の人間になったのだろうか。

では、自分はどんな人間になるのだろう――どんな人間に、なりたい? この命を、どう生きたい?