「ああ……龍さんにはもう頼んである。埋め合わせはする。……すまないが、頼む」

電話の相手は、『いいよー。あれ関係じゃ、こっちも連帯―』と軽い声で応答し、『じゃ、ヘマすんなよー』と切った。

スマートフォン机に置いて、深く息を吐いた。

ミスの許されない謀りの準備だ。

頼むまでもない幼馴染(あいて)だが、自分『頼む』とか言っている。

……少々追い詰まっているな。

……しかし、本当に考えなかった。自分たちが遙音のような存在を傍に置くことになるとは。

遙音から突っ込んで来たから逃げようがなかっただけとも言えるが。

……違うな。逃げようなんていくらでもあった。でも、確かめてみたくなったのかもしれない。

かつて俺たちがそう感じていて、弟に告げた残酷な答えを裏切る現実があるかもしれないと。



『――――んなことばかりしてる俺らが、ロクな死に方するわけないだろ』


罪人(とがびと)を処刑椅子に追い込んだ。階段を上らせた。

法的に裁かれたゆえの結果としても、正義の名のもとにその判がくだされたとしても、犯人を挙げたのは自分たちだった。

一人で、三人で、あるいは弟と。

血にまみれた世界から、最早抜け出す気などない。終生そこに居座り続ける。

――この道を選んだ、対価のようについてまわる血のにおい。

……正直、これだけは咲桜に知られたくはない。

いくら父を通してこちらの世界をわかっていても、来させたくはない。触れさせたくはない。

……もっと綺麗な場所で咲いていてほしい。

そんな風に思う自分たちがやってきたことを、正面切って見せてくれたのは、遙音だった。

自分たちに解決を願ったのは犯人を挙げる組織ではなく、被害者の中で一人生き遺された子供だった。

初めてのことだった。

真っ直ぐに飛びついてきて、「助けて」と言われた。

気まぐれじゃない。確かに、この子を助けたいと思って初めて三人共闘した。

……自分たちで、助けられるなら。