「ああああああ、あの!」
「てーいっ! 場所を弁えなさい変人教師!」
夜々さんが私をひっぺがした。
何故か夜々さんの顔が真っ赤だ。
「さささささ咲桜ちゃん~」
夜々さんが、幾分背丈が上をいく私を抱きしめる。
「わたしの咲桜ちゃんが汚されますーっ! 近づくな変態! いやああああああ!」
真っ青になったり真赤になったりを繰り返す夜々さんを見て、流夜くんは呟いた。
「……咲桜、お前の母代りは溺愛が重症過ぎるぞ」
「……うん、私も今更だけどびっくりしてる」
「朝間先生、こんな人だったのか……」
「遙音くんも夜々さんを天使って思ってた? ただの咲桜大すきさんだよー。あたしと同じく」
「うわー、ほんとに流夜が無表情以外のカオしてる」
素っ頓狂な声が、ベッドを囲むようにひかれているカーテンの向こうから聞こえた。
「衛?」
その声に流夜くんが反応すると、カーテンが開かれて榊原衛さんと吹雪さんが姿を見せた。
「よ。お邪魔してます」
軽く手をあげる衛さんに、流夜くんは平坦な声で応えた。
「……衛みたいな外部に、今来られると困るんだけど」
「聞いてる。吹雪と降渡が突撃したんだって? だから、夜々子さんに匿ってもらってた」
隣の吹雪さんが「そーいうこと」と微笑む。そして流夜くん、一言。
「吹雪と密会でもしてたか、衛。吹雪が悲恋確定だからってお前の方に巻き込むなよ」
『ええええっ⁉』
「んなわけねえよ」
私、笑満、先輩が声をそろえた。
衛さんは呆れた風で言うけど、流夜くんは大真面目な顔で続ける。