「え? いえ、それは大丈夫――……笑満のために、何かする気なの?」

「少しな。用事が出来るから、行けないし来てもらえないけど、心配するな」

そっと、流夜くんが身を屈めてきた。

「りゅ―――」

「……教えてくれてありがとう。お礼」

「―――」

なぜそうさらっと―――お礼?

「ま、まさか頼にもこんなお礼を――

「しねーよ。どうしてお前はそう思考回路がぶっ飛ぶ」

泡喰って手をわたわたさせると、流夜くんは呆れいっぱいの顔をした。

「あのっ、でもお礼言われるようなことしてないよ――?」

「うん? まあ、こちらの話というか……何のために俺ら三人、揃ったまんまでいると思ってんだか、あのガキは」

「……?」

「まだまだガキなんだから、親代わりだろうが頼れっていうこと」

流夜くんは苦笑いした。続いて、私の左手を取った。

「つけててくれたんだな」

カーッと頬が熱くなる。――ったのも束の間、腕をいっぱい伸ばして流夜くんから距離を取った。

突然の拒絶に、流夜くん半瞬固まった。

「……咲桜?」

「ごめんなさいっ、あの、なんてゆうか、笑満が辛いときに私だけ嬉しいのは、なんか……苦しくて……それこそこちらの話なんだけど……」

上手く伝えられる言葉が見つからない。俯いていると、頭に大きな手が降りた。

「大丈夫。だって言ってんだろ」

少し楽しそうな流夜くんの顔。一度だけ、その笑みを閉じ込めた。

「……よろしくお願いします」

うん、と流夜くんから返事があった。

……自分に出来ることは、頼ることだけなのだろうか。

頼は流夜くんを頼る時だと教えてくれて、流夜くんもそれを是とした。

………本当に? 本当に、これしかないのかな……。