「じゃあ、遙音は先生がその……警察関係の人だって知ってたのか?」
「もちろん。あと咲桜もな。咲桜は親父さんが警察の人だから、そっち繋がりで知ってたんだよな」
「え――あ! うん!」
肯け、と咲桜を睨んだ。
華取さんの職業、ずっと秘密にしていたことをバラしても、護れ、と。
「そーいうワケ。神宮は朝間先生とはむしろ天敵だし、黙ってたのは俺のためってことでゆるしてくんね?」
そこまで言うと、仕掛けたヤツらはきまずそうに視線をかわす。
「――遙音、咲桜」
低い声で呼ばれ、咲桜の肩が跳ねた。
同じような反応は周囲の何人かからもあった……。
「お前たち随分勝手にぶちまけてくれたな」
怒ってるー! 当たり前か! そんな咲桜の心の声が、俺にも表情から見て取れる。
「すみませんでした!」
謝ったのは咲桜でも俺でもなく、水をかけた生徒だった。
「あの……なんか勘違いみたいで……すみませんでしたっ!」
神宮は軽く息を吐いた。
「俺の言動にも問題があったから招いたことです。謝るのは遙音と咲桜にだけで構いません。――朝間先生。見計らったような来訪どうも。二人を先にお願いします」
「あら。神宮さんにお願いされるなんて珍しいですね。明日はマグマでも降る予報でしたっけ?」
「星が振って来ても朝間先生に頼みごとなんてしたくないですが、生徒も大事なので」
見物しているヤツらは、ヒョオオオ、と、吹き荒ぶ氷雪と、龍と虎が神宮と朝間先生の背後に見えただろうな。
「みんな。三人を連れて行ってもいいかしら? まだ言いたいことがあるなら、元凶でもあるわたしが聞きますよ?」
にっこり微笑まれて――みんなも、朝間先生は敵に回してはいけないタイプだと悟ったみたいだ。
いつもの天使と言われる笑顔ではなくて、怒りを含んだ笑い方だった。
……そういう人を敵に廻す神宮って。