「? なに?」
「咲桜へのお願い」
「………」
「咲桜は、これから何があっても……自分のこと、責めないでほしい」
「………」
ふいっと流夜くんを見上げる。陽に透けるような優しい眼差しが見える。
「嫌だろ? 自分がすきな子が、誰かに嫌われたり責められたりしているのなんて。それが本人だったら、俺はすごく嫌だな」
「………」
「だから咲桜は、自分のことを嫌いになるのと、自分を責めることはしないでほしい」
「……難しいことを」
「難しくても。……お願いだ」
流夜くんに乞われて、少しだけ笑みを見せた。
「うん。がんばる」
+++
結局、朝まで二人とも眠りはしなかった。
ソファに隣り合って座って、流夜の肩に頭をもたれさせて、たまに話して、静かになってを繰り返して、朝日を見た。
時間、だ。
「……咲桜」
「……はい」
「……帰ろうか」
「…………うん」
いつものように差し出された手を取って、華取の家に戻った。