通話が終わる。
幸せ報告だけでは終わらなかった。
自分が浸るような甘さの中にいたころ、笑満は一人思い悩んでいたのかもしれない。至らない自分が歯痒かった。
笑満のおかげで、大切な時間を過ごすことが出来た。
じゃあ、自分に何が出来る? 笑満と、笑満の大切な人のために―――
「たぶん、頼り時」
「……え?」
登校するとすでに、頼が机で寝ていた。
その隣、窓枠に腰かけて頭の中を整理していると、頼からそんな声がした。
寝ていたと思っていた頼が重たそーな瞼を半分持ち上げて、こちらを見ていた。
「誰かさん」
欠伸とともに言われた、その言い方ではっきりとわかった。
次の瞬間にはこてんとまた、机にへばりついていた。
ちなみにこの学年主席、こんな授業態度なくせに遅刻欠席は一回もない。
+
「……なるほど。あいつが来ないと思ったらそんなことあったか」
「うん……。笑満も落ち込んじゃってて……」
午前で終わった補講。
流夜くんが学校を出る前にと思い、笑満を頼に旧館に預けてすっ飛んできた。
流夜くんは軽く腕を組んで難しい顔をしている。
……今朝とはまるで違うカオ。
「まあ、確かに松生のご両親のが一般的な感覚だろうな。俺も、咲桜の親が在義さんだったから許されている部分、あるし」
「……はい」
「だが――日義はほんと回転がいいな……。大丈夫だ、咲桜。明日には松生も遙音も笑ってる」
「え? どういう意味?」
「明日には大丈夫にする、て意味だ。俺から約したことだけど、今日はちょっと行けなくなる。ごめん」