ねぇ、恋愛ってドキドキするものでしょ?

「はいはい」

ねぇ、ドキドキしなきゃ恋愛じゃないの!

「ちょっと、春馬聞いてんの?」

私のうなじから指を挿し入れて、春馬(はるま)が、私のよそ見ばかりの癖っ毛を綺麗に魔法をかけていく。

「俺、真理亜(まりあ)の髪の毛に恋してんの」

意地悪く笑った春馬のその言葉の意味に、私はまだ気づいてなかった。

あなたの指先は魔法みたい。

昔見た絵本の中のお姫様みたいに、あなたの指先で私に魔法がかかる。

ひねくれたお姫様には王子様なんて来ないと思ってた。

「夢、思い出してよ、真理亜」

幼い頃に願った、おままごとみたいな夢は、ちゃんとあなたが叶えてくれた。

そして、今日あなたの指先が、私を人生で一番綺麗に魔法をかけてくれる。