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 母の遺言を耳にして、真っ先に浮かんだのがその人だった。

 まぶたの裏側に暗記してしまった家系図を広げ、並んだ名に次々とバツ印をつけていく。
 無駄な作業に十年以上かけてしまった。それでも、今日というの日を迎えられたのならばなんでもいい。

「嬉しそうだな」
「まあね」

 深緑がむせかえりそうに揺れる山々に別れを告げ、一人の少年が村をあとにした。