(1)
母の遺言を耳にして、真っ先に浮かんだのがその人だった。
まぶたの裏側に暗記してしまった家系図を広げ、並んだ名に次々とバツ印をつけていく。
無駄な作業に十年以上かけてしまった。それでも、今日というの日を迎えられたのならばなんでもいい。
「嬉しそうだな」
「まあね」
深緑がむせかえりそうに揺れる山々に別れを告げ、一人の少年が村をあとにした。
母の遺言を耳にして、真っ先に浮かんだのがその人だった。
まぶたの裏側に暗記してしまった家系図を広げ、並んだ名に次々とバツ印をつけていく。
無駄な作業に十年以上かけてしまった。それでも、今日というの日を迎えられたのならばなんでもいい。
「嬉しそうだな」
「まあね」
深緑がむせかえりそうに揺れる山々に別れを告げ、一人の少年が村をあとにした。