「もう、リンあんま困らせないでよ」

「だってね、リョウ。もしかしたら、高いところの方が見つけやすいかもしれなでしょ?」

リンが人差し指を立てるとニッと笑った。

「あ……そういうこと」

リョウは苦笑いした。リョウはリンには内緒にしているが、本当は高いところが苦手なのだ。リンにそんなカッコ悪いところ見せたくなくて今まで一度も言い出せたことない。

「ちょっと……待っててね」

リョウは一呼吸してからジャングルジムに手をかけた。

「リョウ、何が何でも私の初恋、今日中に必ずみつけるんだ」

そうだ。幼い頃、公園の砂場のどこに埋めたか分からなくなった宝物と称した石もリンは、星が見え始めるまで諦めずに探し続けていた。リンは泣き虫のくせにいつだって頑固で、自分で一度決めたことは最後まで諦めない。

リョウは意を決すると、リンのスカートの中をなるべく見ないようにジャングルジムを登っていきリンの隣に座った。



「気持ちいいね。リョウ」

「確かに、気持ちいい」

地上から少し高い所にいるだけで、頬を撫でていく風は心地よい。

「こうやって、リンとジャングルジム登るの久しぶりだね」

「うん、私、悲しいことや落ち込む事があるとよく登ったから」

──あれは、いつだっただろう。

ジャングルジムのテッペンで泣いていたリンを見つけたリョウは、リンの為になんとかジャングルジムをテッペンまで登り、リンにハンカチを差し出したことを思い出した。

そして夕日が沈む頃、グスグスと泣くリンにいつものソレを手渡すと、リンが頬を膨らませながら『甘いね』と満面の笑みでリョウを見つめ返したことを思い出す。