ふわふわとした意識の中で、私は一人佇んでいる。ここは式神を持つもの同士が他者から覗かれないように待ち合わせできる場所。


『聖なる箱庭』そう呼ばれている。


箱と呼ばれる空間は、東京ドーム10個分は優にあるのではないだろうか。とにかく広く、端から端までの距離なんて測ったことも移動したこともないからわからない。

中央には、神として崇められている「大樹神(たいじゅしん)」と呼ばれる桜の樹があり、その根の上に沿って張り巡らされた通路には無数の扉が並んでいる。

その一つ一つが、決められた相手との待ち合わせの場所に使われているのだ。

私の式神である、白い小鳥が誘うように、一枚の扉の前へと誘う。

木製の扉で、ダイヤ型の磨りガラスが嵌め込まれ、細かい彫刻が施されているドアノブはアンティーク調の古い真鍮が用いられていた。

ドアには不規則にナンバーが割り振られており、今回の扉には1508と刻まれていた。

前回は20841だった。単純に扉の数なのか、不規則に割り振られたナンバーなのかは誰も知らない。

初代御津宮当主が、この箱庭を作ったのだと志築が話していたのを思い出す。