「命中精度が減ったくれもない……まぁ、注意していれば大丈夫だろう」

話していた新城の足元を水が通過する。
抉られた部分をみて、新城は後ろへ下がった。

「俺達は危険かもな」

やっぱり。

「そもそも、どうして一条彼方君を連れてきたのさ、そりゃ、操られている可能性はあったけれど」
「それだけじゃない」

新城は傍観を貫いている退魔師をみる。

「呪術を注ぎ込まれている可能性があるから解呪の為の動揺をもたらそうという意味もあったんだが……」

新城は頬を引きつらせていた。

「僕の事を何年も思ってくれた事は嬉しく思います。でも、その為に他人を切り捨てるなんて間違っている!僕は、度胸とか、カッコ良さとか、そういうのはないけれど、間違っていることは間違っているといいたい!」
「酷い、酷い、酷い!カナタを愛しているというのに、永遠に居たいというのに、その思いに応えてくれないのですか!」
「僕は貴方の事を何も知らないんだ!それなのに、気持ちに応えようなんて無理です!まずは貴方の事を知らないと!」

目の前でヒートアップしていく二人。
どうでもいいことなんだけど、びくびくしていた彼方君の印象が凄い勢いで変わっているんだけど。

「どうも、青山の大将が色々と吹き込んでいたからその影響かも」
「何したんだろう?」

完全に僕達、傍観者というか部外者になっている。

「ですから!」

ミズチ様の周囲に渦巻く水が形を変えて竜に変化していく中、彼方君が前に踏み出す。

「まずは友達からはじめませんか!いえ、お願いします!僕と友達になってください!」

右手を前にだして頭を下げる。
ある意味、告白に見えるけれど、まずは友達からって、相手は納得――

「嬉しい」

どうやらそれでも良いらしい。

「良いの?あれ」
「良いんだろ、その証拠に心の動揺が弱まった、チョロイのか、どうなのか、解呪する。あの退魔師、抑え込んでくれ」
「わかった」