水を司る神妖怪のミズチが水を操るとなるとかなりマズイ事になる。

「さぁ、やれ」
退魔師が指示を出した途端、膨れがある水の妖力。
後ろへ下がる。
凍真がいた場所に水の奔流が襲い掛かった。
少し遅かったら水に飲まれて終わりだっただろう。
術の力で視力や肉体の強化を行っていたのだが、ギリギリだった。
懐から術札を取り出して数枚を投げる。
空中でみえない壁となって次々と迫る水の塊を防ぐ。
しかし、相手は神クラスの妖怪、しかもミズチ。
ちょっとでも油断すればあっさりと藻屑か小間切れになるだろう。

「陰陽師以下の祓い屋にしては長く持っている方だな、どれ、手を貸してやろう」

ニタァと退魔師から黒いモヤが噴き出す。
モヤが凍真の体を抉ろうと迫る。

「あぁ、ヤバイ」

迫るモヤが凍真の体に触れるという所で、横から伸びた刀が弾き飛ばす。

「遅いぞ、こら」
「これでも急いできた方だから」

やってきた相棒に凍真は笑みを浮かべる。








「一応、わかってはいるんだけど、これはどういう状況?」

僕は刀に絡みついていたモヤを振り払う。

「あの腐れ退魔師にミズチが操られている。ミズチ一人ならなんとか相手はできるんだが、退魔師のモヤも重なると厳しい」
「それは新城一人の場合でしょ?」
「よくわかっているな。その通りだ」
「じゃあ、僕はいつも通り?」
「あぁ、といってやりたいところだが……その刀はモヤ相手に対応はできるがミズチ相手は厳しいだろう、気を付けて戦え」

新城からの忠告に僕は頷いて前に出る。

「おやおや、祓い屋は後ろかい?普通の高校生を前にするなんてプライドが高いのかなぁ?」

ぴくりと刀を握りしめる手に力が入る。
退魔師の侮蔑の言葉に反応しそうになる僕を止めた。

「気にするな。言葉の応酬は怪異相手によくあることだ」