「そこまでだ。お前様」
「あ、僕は」
「妖界において、名のある刀匠が鍛えた刀だ。とてつもない力がある分、力ないものが触れると暴走の危険がある」
「妖刀か」
「今のお前様が使うと飲まれる危険がある。これはダメだ」

彼女は鞘に刀を戻すとそのまま僕の手が届かないところへ置く。

「お前様の強さはとても気になるが、こんなものに頼った強さは興味がない」

真剣な表情で答える彼女。
戦う事に生き甲斐を感じている彼女だけれど、今は確実に僕の身を案じていた。
悪い人じゃないんだ。
そんな相手に彼女とか、名前を呼ばないというのは失礼な気がする。

「……ありがとう……千佐那」

最後の方にとても小さく伝えた。
瞬間。

「!!」

がくがくと体を震わせて彼女は膝をついた。
え?

「大丈夫?」
「大丈夫だ。さぁ、お前様、武器を選ぶぞ」

この時、何故、彼女が体を震わせたのか。
どうして、新城が彼女の名前を呼ぶなと言っていたのか。
後になって僕は理解することになる。
尤も、その時には色々と手遅れなんだけど。