「それって、滅茶苦茶ヤバイんじゃ」
「だからこうして、雨の中も解呪なんて面倒なことをやっているんだ。もし」

新城は置かれている岩に触れる。
ただ触れただけの筈なのに岩は淡く輝きを放つ。

「どっかのバカが俺の考えている事態を望んでいるっていうなら、早急になんとかしないとこの世界は終わりだ」

最悪の未来を想像して、僕はごくりと唾を飲み込んだ。
その日から毎日、僕と新城は解呪に奔走することになった。


















目を覚ますと耳に届く雨音。

「雨かぁ」

ゆっくりと体を起こして目の前のカーテンをめくる。
しとしとと雨が降っていた。

「まだ梅雨じゃないんだけどなぁ」

一週間連続で雨が降り続けている事に気が滅入りながらハンガーにかけてある制服を手に取る。

「おじさんは朝から仕事か」

充電していた携帯電話を手に取るとおじさんからメッセージが届いていた。
あの出来事から家族と距離を置いている僕はおじさんと一緒に生活をしている。
おじさんは何の仕事をしているのか教えてくれないけれど、いつも忙しくて朝起きたらいなくて、僕が寝ている間に帰ってきているらしい。
食べ終わった皿や洗濯機の中に服が入っている。

「無理をしていないといいんだけど」

おじさんは独身だ。
気にしなくていいと言ってくれているけれど、独身であるおじさんが僕を引き取ってくれた事で重荷になっていないか不安になってしまう。

「ダメだな、雨が降っているせいか後ろ暗い事を考える」

前までは気になっていなかった雨のせいかもしれない。

「きっと、あの日なんだろうな」

怪異によって、否、新城の手によって僕の家族が歪んでいると明かされたあの日から、僕は雨が嫌いになった。