「アンタの力は借りない!アタシはアタシで身を守るから!」
「そうかい、俺は寝――」

むくりと体を起こす新城。
舌打ちしながら彼は傍に置いていた上着を手に取る。

「ちょっと、どうしたのよ」
「大将、手綱くらいちゃんと握ってろよな!」

悪態をつきながら部屋を飛び出す。
少し遅れて轟音と共に地面を転がりながら走っている雲川丈二と刀を振り回す青鬼の娘。

「最悪だな、おい」
















時間は少し巻き戻る。















用意された布団で休みを取っていた僕は気配を感じて目を開ける。
祖父の所で受けた修行か、自分に何かしらの感情を持って近づいてくる者がいれば察するようになっていた。

「……誰?」
「流石だな」

室内は明かりを消しており、窓から差し込む月の光が明かりの役割をしていた。
そんな月の光を受けてキラキラと輝く長い髪、そして、海の様に青い瞳が真っすぐにこちらをみている。
何より目立つのは額から伸びる二つの角。

「綺麗だ……」

自然とその言葉が口から紡がれた。

「ほう、この私を見て綺麗というか、ますます興味が出てきたぞ」

小さく微笑む女性。
微笑んだものから獲物を前にした獣のような笑みに変わる。
片手に持ち上げられた物に目が行く。
キラリと輝く刃物。

「!?」

彼女が振り下ろそうとする前に布団に包まれていた足を振り上げる。
バランスを崩した事で彼女が振り下ろした刃がすぐ近くの畳に突き刺さる。
ずぶりと深く刺さった刃をみて、きょとんとしている彼女を見て、慌てて布団から這い出た。

「今の動き、ますます気に入ったぞ。お前様」