「おう、最悪な事態だな。ミズチ様は数年前も一度、退魔師に襲撃を受けている。今は俺のところで情報を抑えているがあまり長くは抑えられないぞ」
「抑えてくれるだけでも助かる。神クラスの妖怪が人間界に攻め込んでくるなんてなったら終わりだからな」
「確かに連中の中に血気盛んな奴もいる。だが、戦争なんてやるだけ無駄だ」

どかりと畳の上へ腰を下ろしながら話をする

「やるなら一対一の真剣勝負よ。あれほど、血沸き肉躍る戦いはない」
「鬼っていう奴はどいつも好戦的だな。本当」

呆れている新城に激しく同意。

「さて、こういう事態であれば、俺達妖怪も放置なんてことはできねぇ。だが大っぴらに動けば過激派妖怪が騒ぎ出すことになる」
「だから?」
「俺の娘をお前達と同行させろ」
「娘?娘がいたのか」
「まぁな、人間の年齢で言うとお前らより少し上くらいか?とーっても強いぞ」

新城は肩を竦める。

「早急性を求める事態だし、戦力は多い方がいい」
「じゃあ、早速、顔合わせだ」

パンと青山が手を叩いた途端。
背後から感じる殺意。
咄嗟に置かれている箒を手に取って振り返る。

「ヤ、バ」

目の前に迫る刃。
これは防げない。
刃が持っている箒を切り裂いて額へまっすぐに向ってくる。

「いきなりな挨拶だな」

札を持った新城が間に入る。
迫る刃がみえない壁に阻まれて僕の眼前で止まった。

「ありがとう、新城」
「気にするな」

バクバクする心臓を抑える為に小さく深呼吸。

「これはどういうことだ?青鬼の顔合わせっていうのは相手を斬殺することか?」

低い声で新城が青山に問いかける。

「いや、すまん。千佐那!お前は何をやっているんだ!?」

青山が千佐那と呼んだ青鬼の女性は新城が展開した壁を壊そうと躍起になっていて話を聞いていない。