「……何だと?」
「悲願とやらの為に体を犠牲にすることがアホらしいって言ったんだよ。どうやら耳もバカになっているらしい」
「貴様、自分が不利だという事を理解しているのか?」
「別にぃ、逆転すればいいだけだ」
「逆転?逆転といったか!?ただ我が秘術を抑え込むのが精いっぱいな分際で何を言う!?もういい!あまり人は殺さないつもりだったが邪魔をする奴は消え去るがいい!」

モヤがさらに増加して新城を包み込む。

「凍真が!雲川!助けないと!」

瀬戸さんが叫ぶ。
けれど、僕は動けない。
新城が指示を出すまで待つ。

「我が秘術の前に――」
「その言葉、聞き飽きた」

モヤに包まれていた新城が言葉を紡いだ途端、モヤが四散する。

「なっ!」
「え、なに?なに!?」

驚いている僕と何が起こっているのかわからない様子の瀬戸さん。
モヤが消えて呆然としている退魔師。
僕は新城の手に持っている鈴に気付く。

「貴様、どういうことだ!?なぜ、私の術が効かない!?」
「おいおい、これは術者同士の戦いだろ?あっさりと手の内を教えるバカがどこにいるんだ?」

呆れた様子の新城は指を鳴らす。
退魔師の足元に札が四つ。

「しまっ」

逃げようとした退魔師の足元で札が爆発する。

「自分の技に絶対的自信を持っていたから足元の爆発札に気付かないって、三流よりも下過ぎるだろ」

合図があったので僕は倒れている退魔師へ駆け寄る。
仕込んでいた爆発札によって

「気絶しているよ」
「じゃあ、縛りあげて長谷川の奴に……!」

新城が後ろを見る。
ミズチ様と一条さんが居た場所、そこに一人の女が立っていた。
陰陽師が着るような黒い衣を纏い、彼女の腕の中に気絶しているミズチ様が。