ミズチはゆっくりと一条彼方の方へ歩み寄る。
数メートル程の距離の筈なのに、まるで一生届かないような気分になっていく。
心臓がバクバクと音を立てていて、今にも爆発しそうだ。
自分が近づいたというのに彼は真剣に絵を描いている。
後ろから彼の絵を覗き込む。
池で泳いでいる魚や近くの鳥が描かれていた。
とても、綺麗だ。
ミズチは昔を思い出す。
彼方は小さな頃から絵を描くのが好きだった。
妖怪としてまだ力が弱かった自分を何度か描いてくれた事がある。
その時はつたないものだったけれど、不思議と心が温かくなる気持ちだった。
「綺麗な絵」
「っ!?」
びくりと体を震わせる彼方。
「とても綺麗な絵です。まるで生きているみたいです」
「そ、そんなことないです。只の趣味で、そこまでうまくは」
話しかけられた彼方はしどろもどろになりながら答える。
「いいえ、そんなことありません。絵に気持ちがこめられています。この絵はとても素敵なものです」
「…………そんなこと言われたの、はじめてだ」
「いいえ、はじめてではありませんよ」
否定しようとする彼方へミズチは首を振る。
「え?」
「覚えておりませんか?幼い頃――」
ぽかんとしている彼方の顔を見て、ミズチは思う。
数メートル程の距離の筈なのに、まるで一生届かないような気分になっていく。
心臓がバクバクと音を立てていて、今にも爆発しそうだ。
自分が近づいたというのに彼は真剣に絵を描いている。
後ろから彼の絵を覗き込む。
池で泳いでいる魚や近くの鳥が描かれていた。
とても、綺麗だ。
ミズチは昔を思い出す。
彼方は小さな頃から絵を描くのが好きだった。
妖怪としてまだ力が弱かった自分を何度か描いてくれた事がある。
その時はつたないものだったけれど、不思議と心が温かくなる気持ちだった。
「綺麗な絵」
「っ!?」
びくりと体を震わせる彼方。
「とても綺麗な絵です。まるで生きているみたいです」
「そ、そんなことないです。只の趣味で、そこまでうまくは」
話しかけられた彼方はしどろもどろになりながら答える。
「いいえ、そんなことありません。絵に気持ちがこめられています。この絵はとても素敵なものです」
「…………そんなこと言われたの、はじめてだ」
「いいえ、はじめてではありませんよ」
否定しようとする彼方へミズチは首を振る。
「え?」
「覚えておりませんか?幼い頃――」
ぽかんとしている彼方の顔を見て、ミズチは思う。