「ジョシコウセイというのが何かわかりませんが、瀬戸様、貴方の言う通り、我はカナタと恋人に……もっというならば、夫婦のような関係になりたいです」

扇子で口元を隠しているが真っ赤になった顔を隠しきれていなかった。

「アタシ、恋愛は好きじゃないけれど、会わせてあげたいかも」
「……瀬戸様、ありがとうございます」

ぺこりと頷くミズチ様。

「ひ、姫様、今の一体!?」

その後ろでフリーズしていた流が慌てた様子で叫ぶ。

「そのままの意味です。我はカナタともう一度、会いたいのです」
「……わかりました。姫様が仰るのならば、私はそれに従うのみです」
「ありがとう、流」
「仲良き事だが、少しいいか?」

新城が手を挙げる。

「アンタは妖怪、相手は人間。そこは理解した上で会いたいというんだな?」
「そうです」
「結果がアンタの望まないものだったとしても?」

鋭い新城の目を向けられてもミズチ様は表情を変えない。

「えぇ、覚悟の上です」
「……俺としては怪異と人が触れ合う機会を作るなんて事をしたくない」
「ちょっと!」

瀬戸さんが非難の声をあげるも新城は黙るように手で制す。

「結果が最悪なものでも、アンタは大人しく“妖界”に帰るんだな?」
「はい、帰ります」
「…………わかった。ツテを使ってアンタの言うカナタって奴を探してみよう」
「祓い屋様!」

ミズチ様は感謝しているのか、ぺこりと頭を下げる。
彼女が頭を下げた事で流がわたわたしていた。

「こちらがカナタの事で覚えていることを書き記したものです」
「期待はしないでくれよ……雲川、ここは任せる」

ミズチから受け取った紙をちらりとみてから、立ち上がった新城は教室から出ていく。
僕は慌てて新城の後を追いかける。