冬の枯れ木の並木道をぼうっと歩いた。町はすっかり寒くなった。
息が真っ白に染まる。マフラーに顔をうずめると、ぞわりと背筋が痛くなり、急に怖くなった。
合否より先に断られたという事実を、どう家に持って帰ろうか。
さんざん悩んだ挙句、どうすればいいか思いつかなくて結局そのまま両親に伝えることにした。
それがきっと、いけなかった。
「呆れた。まゆアンタまさか、こっそり学校サボったり寄り道したり、不良みたいなことしてたんじゃないでしょうね」
お母さんは仕事から帰ってきたところらしく、仕事着のまま、外に干しっぱなしの洗濯物を取り込んでいた。
声が冷たかった。
まっすぐ家に帰ってきたことをすぐに後悔した。
「こういうことにならないために、コツコツ勉強して先生に好かれるように真面目に過ごしてなさいって言ってきたのに……」
「……」
「一般入試なんてギャンブル。出来ればしたくなかったわ。体調やメンタルがちょっと崩れたらドミノ倒しのように狂っていく魔物なのよ。向かいの家のお姉さんだって、試験前日にインフルエンザで大変だったらしいんだから」
窓をピシャンと閉めて、大きなため息をつく。一瞬畳もうとした洗濯物をソファに投げて声を荒げて、頭をかいた。「あぁ~もう!」
「はやくお母さん達を楽にさせてよね。受験生が家にいるってだけで、うっとうしくて仕方ないのよ!」
私の顔は一切見てくれなかった。
そのタイミングでお父さんが帰ってきた。
お母さんは即座に淡々と事実を告げた。お父さんは「そうか……」とだけ言い、縮んだ背をさらに丸めて着替えに行ってしまった。
その日の私が、果たして晩ごはんを食べたのか。物が喉を通ったのか。何も覚えていない。