行く手を阻む先に、女が立っていた。
ニットで身体のラインが強調された、綺麗な人だった。
「体調は、もう大丈夫なの!?なんでずっと大学休んでたの?」
愕然としていた。
「……もうヘーキヘーキ」
誰なんだろう、お友達? というか、”凪”?サナギの本当の名前?
体調って何?──大学を休んでた?
一気に蚊帳の外になり、私は一歩下がって、女がぶつくさ言って泣きついているのを見ていた。なんだか深刻そうだった。
するとサナギは姿勢を急にしゃんと正し、女に向かい合った。
「けじめつけに、今日はやって来たんだ」
「お連れの、その高校生は?」
「お知り合いの受験生」
私服を着ているのに、女に高校生と瞬時に見破られたことが恥ずかしくなった。一応化粧だってしてるのに。むっとした私はサナギの背後に隠れた。
「どういう関係よ。なんで着いてきてるのよ」
「大切な人だからだよ」
胸がきゅう、となった。
でも、瞬時の女の顔が一変した。
「はぁ!?まさか、そういうこと……!?大学休んでる半年の間に……?」
キッと目を鋭くし、見逃さなかった女は瞬時に手を挙げた。
しかし、その隙に横から割り込んできた男の人がいた。
その人の手が、サナギの頬をグーパンチにした。
「クズ野郎!!!」
倒れ込んで頬を押えるサナギ。
「くたばれ、僕のまゆちゃんに手を出すな。バツイチの癖に」
その男の人はサナギの上に馬乗りになり、首を絞めていた。
信じたくない、人だった。
「漆原くん……!?」
「ふざけるな、大事起こした末に、ショックで大学を休学して、今更バイトだぁ?お前なんかが作る麺を食べる客が可哀想だ」
「なんとでも言えよ」
「漆原くん止めて!なんで!?」
「弟が半年以上電話無視し続けた兄を問い詰めてもいいだろ。付けてたんだよ。ずっとな。漆原凪。俺の兄だ。」
サナギはただただぶたれていた。大慌てで出てきた事務局員や教授に取り押さえられた。
呆然とする私は「ちょっと来て」とリブニットの女に手を引かれて女子トイレの中に連行された。


