「それは……気まずかったし、彼氏できたなら余計に来ないだろうなと思って誘いにくかっただけ。……嫉妬してたのは咲葵より永倉くんにだよ。永倉くんと話してるときの咲葵すごい幸せそうだったから、とられた気がしてちょっと寂しかった」
正直に言えば咲葵にもちょっと嫉妬していたのだけど、ややこしくなりそうだから言わないでおく。
それに恋愛感情から生まれる嫉妬じゃない。
永倉くんが私を庇ってくれるのは──みんなが私に接してくれるのは〝咲葵のおまけ〟だからで、私自身には誰も興味がないのだと思い知らされてるみたいで悲しかった。
だから永倉くんが私のことを〝友達〟だと言ってくれたとき、すごくすごく嬉しかった。
「なにそれ……わたしずっと勘違いしてたってこと?」
「そうだよ。全部咲葵の勘違い。ていうか仮に永倉くんのこと好きだったとしてもそんなことで怒らないよ。私のこと好きになってもらえないのは咲葵のせいじゃないじゃん」
それに私だって、恋愛対象が女の子だったら咲葵を好きになってる。
咲葵はほっとしたような困惑しているような、複雑な顔をしていた。
「だって! 凌と話してるとき顔真っ赤だよ⁉」
「永倉くんはなんていうか……推し? ていうか、あんな顔面が目の前にあったら誰だって緊張するでしょ⁉」
「別にしないよ! ていうか半年間も見てたら慣れるでしょ!」
「慣れないんだよ! 美しすぎるんだよ!」
「最近、凌のことずっと目で追ってたよね⁉ わたしそういうのけっこう鋭いから!」
「鋭いのは知ってるよ! ……けど、それは」
そう、いつからかつい目で追ってしまうようになった。後ろ姿から目を離せなかった。
自分でもよくわからなかった理由に、今気づいた。
「……後ろ姿が、蓮に似てたから」
「レンって?」
「あ」
つい下の名前で呼んでしまった。
恥ずかしくて顔が熱くなる。名字をど忘れするくらい恥ずかしい。
「あ、いや、えっと、」
「好きなんだね」
「え?」
「さっき、美桜には好きな人がいるっぽかったって言ったでしょ? 今あの頃と同じ顔してる」
──ああ、そうか。
私、蓮のこと好きなんだ。
今の今まで自覚がなかったのに、自分でも驚くほど素直にそう思えた。
だって私が求めていたのは、待ち焦がれていたのは、蓮だったから。
今だってそう。