「というわけで、わたしけっこう腹黒いんだよ。蘭音も茜もどうでもいい。バカみたいだって、くだらないって思ってる。いじめはださいとか言ってるけど、あんなのいじめだよ。自覚ないところが余計にたち悪いし救いようがない。最近はもう一緒にいるのも恥ずかしいくらいだったし、あっちからハブいてくれて清々した」
すごい毒舌だ。だけど紛れもなく正論だった。
たとえ罵詈雑言を浴びせられても──と覚悟したつもりだったけれど、やっぱり面と向かって言われるのは想像以上にダメージが大きかった。
その「くだらない人たち」に必死にしがみついていた私はもっとくだらないと思われていただろうし、咲葵いわく「デスノート」には私のことも書かれていただろうと思う。
だけど咲葵は、それでも懲りずに私のそばにいてくれた。今こうして向き合って、本音を語ってくれた。
「どうして今まで誰にも本音を言えなかったんだろうって考えたら、もちろん自分のメンツもあるけど、それ以上に美桜に嫌われたくなかったからなんだよね。……結局わたしは、美桜が大好きなの」
咲葵は終わりの合図みたいに、ふう、と短く息を吐いた。
私もそうだった。結局、咲葵が大好きだった。憧れていた。
変わりたいと願い、なりたい自分を想像したとき、一番に浮かんだのは咲葵だった。
「あと……偉そうに言っちゃったけど、わたしも美桜に謝らなきゃいけないね」
「え? なに?」
「凌のこと。……美桜の気持ち気づいてたのに、知らないふりして付き合ったりしてごめん」
ん?
「ご、ごめん。なんの話?」
「なんの話って……美桜、凌のこと好きだったでしょ?」
「好きじゃないよ?」
「えっ⁉」
咲葵が大きな目を真ん丸に見開いた。
しばし石化した咲葵は、我に返って回想するように目線を斜め上に投げる。
「あの……もうひとつ訊いていい?」
「うん?」
「中学のとき、美桜って坂部のこと好きだったよね?」
「全然好きじゃなかったよ?」
咲葵は再び石化して、口をあんぐりとしながら私を見ていた。
鋭いと思っていた咲葵にまさかの巨大な勘違いをされていて、私の方がよっぽど驚いているのに。
「あ。坂部といえば、咲葵ってなんでクラス会来なくなったの?」
「坂部のこと嫌いだからだよ」
「そうなの? でも中学のとき仲良かったよね?」