部屋に案内され、ドアを閉めて、テーブルを挟んで座る。

 体勢は私の方を向いているものの、やっぱり視線は交わらない。

 咲葵は長く濃いまつげを伏せていた。

「話って?」

「ごめん!」

 咲葵は私の用件に見当がついたのか、あまり驚かなかった。

「咲葵、ごめん。全部嫉妬だったの。私にないものをたくさん持ってる咲葵が、ずっとずっと羨ましかった」

 焦燥に駆られながら、順序だとか考えずに思いつく限りの言葉をまくし立てるように吐いていく。

「蘭音と茜に逆らって、ひとりになるのが怖かった。咲葵がグループを抜けてから、ほんとは咲葵のところに行きたかったのにできなかった。だって咲葵は人気者で、いつもみんなに囲まれてて……親友だと思ってるのは私だけなのかもしれないって、咲葵にとっては私なんかただの腐れ縁だって、大勢いる友達の中のひとりに過ぎないって、そう思われてるかもしれないって悔しかった。私なんかいなくても平気だって、いつか私から離れていっちゃうんじゃないかって寂しかった」

 だから。

 離れていってしまう前に、自分から離れてしまえばいい。

 私だって別に咲葵がいなくても大丈夫。そう見せつけたかったのかもしれない。

 私はただ、跳ねのけられることが怖くて、咲葵から逃げただけだった。

「私は……私は、咲葵が大好きだから。だから悔しくて、寂しくて、それ以上に怖かったの。なんの言い訳にもならないけど……本当にごめん」

 胸に手をあてて、深呼吸をした。

 そんなはずないのに、空気が物理的に重くなった気がした。

 咲葵は私を見てはくれなかった。

 それでも咲葵から目を離さなかった。

「わかった。じゃあわたしも正直に言うね」

 目線と同じように、声も床に落とすように呟いた。

 なにを言われるんだろう。

 家に入れてくれたからって、赦してもらえたわけじゃないことはわかってる。

 もしかしたら今から罵詈雑言を浴びせられて、今度こそ絶縁宣言をされるかもしれない。

 だけどなにを言われても言い訳はできないほど、私は咲葵にひどいことをした。

 覚悟を決めて固唾を呑んだ。

「最近、っていうか高校入ってからずっと、美桜のこと見てるとイライラした。蘭音と茜の顔色ばっかり窺って、いつもおどおどしてて。わたしは昔みたいに、間違ってることを間違ってるって言える美桜が好きだったから。……だけど、わたしも嫉妬してたんだと思う」

「え……?」