──俺がいなくなっても、それだけは忘れないで。

 ちょっと間を置いていなくなるなんて、なんとも時生──ううん、蓮らしかった。

 蓮は学校に来なかった。

 授業ではなく学校祭の準備であって、登校は強制じゃない。だとしても、蓮が理由もなしにさぼるとは思えなかった。

 学校帰りに神社に寄って暗くなるまでねばってみても、蓮は姿を現さなかった。時差で風邪でも引いたのかと思ったけれど、LINEを送っても返信どころか既読がつくことすらつかなかった。

 避けられているとは思わなかった。だって蓮はそんなことしない。

 ひどい風邪で、スマホを見ることすらできないのだろうか。

 それとも──。

 嫌な予感が走る。

 違和感はいくつもあった。むしろ蓮の言動は全体的に違和感だらけだった。ありすぎたせいで途中から感覚が麻痺して、蓮だからと全部納得して、いちいち気にしたら負けだとさえ思っていた。

 何度か「時間がない」と言っていた。昼間どれだけ室内が暑くても絶対に学ランを脱がなかった。いくら寒いからって、この時期に手袋とマフラーなんてやっぱりどう考えてもおかしい。

 蓮は私に、なにか重要なことを隠しているのかもしれない。

 二日、三日と経つにつれて、嫌な予感は募る一歩だった。