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〈006:ノウゼンカズラ@HOME 20XX/08/31(X) 20:01

一年間で、俺は自分でもびっくりするくらい身長が伸びた。

つってもやっと平均くらいになっただけだけど、それでも嬉しかった。彼女との目線が同じくらいなのがちょっと嫌だったから。外見が女みたいでも、一応男のプライドがあった。

初めて彼女と夏以外の季節を過ごした。

新たな収穫もあった。

志望校が同じこと。彼氏はいないこと。小学生の頃にからかわれてたのが原因で男がちょっと苦手らしかった。

落ち込まなかった。むしろ嬉しかった。だって、男が苦手なのに俺とはこうして一緒にいてくれる。理由なんて一つしかないと思った。

受験に備えて髪を切った。なんとなく伊達眼鏡もやめた。そしたら女子の態度が急変した。

「女の子みたい」が「美形」になって、体形も「ひょろっとしてる」から「すらっとしてる」に変わった。

別に嬉しくなかったけど、自信はついた。

だから受験が終わってすぐ告った。

彼女にとって俺は特別な存在だって、信じて疑わなかった。

だけど彼女は、ほしかった返事も想像してた反応もくれなかった。

困った顔して、俯いて、ぽつりとこぼした。

ごめん、付き合えない。だってわたしのこと何も知らないでしょ、って。

ショックだった。意味がわからなかった。〉

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