身体は無駄に頑丈な私は、幸い風邪を引くことなく起きてすぐに準備を始めた。

 休日に朝っぱらから勝手に家を出たらお母さんにまた小言を言われるのかはわかっていたから、悩んだ末にクローゼットから予備の制服を引っ張り出してそれを着た。登校日だとアピールをするため。

 突っ込まれたとしても、学校祭の準備という理由がちゃんとある。行かないわけだから嘘なのだけど。ばれないことを願う。通常の登校日じゃないし強制でもないわけだから、担任から電話が来ることもないだろう。

 と、いつもの癖であれこれ考えてしまったけれど、杞憂だったと気づいたのはリビングに入ったとき。

 リビングは荒れ果てたままだった。

 お母さんとはあれからひと言も話していない。

 神社から帰ったら家の中は真っ暗で、お母さんがリビングにおりてきた形跡はなかった。

 ──今日は私がご飯作るから、一緒に食べよう。久しぶりに、ふたりでゆっくり話そう。

 その台詞は言えないまま今に至る。だからお母さんの中では「こんなときまでご飯を作らせようとする非情な娘」になっていることだろう。

 ふう、と息を吐いて袖をまくった。

 待ち合わせ時間までに完全復旧させるのは無理だから、ひとまず割れたお皿や倒れた家具だけ片付けておくことにした。

 安全に歩ける程度に片付けを終え、朝食作りにとりかかる。土曜日だからパートは休みだろうけど、蒼葉と葉月を迎えに行く時間までには起きるはず。

 とはいえ何時にリビングに来るかはわからない。パンを焼いておくにしてもカピカピになってしまうと困るから、おにぎりとお味噌汁を作って家を出た。