◇ ◇ ◇

〈005:ノウゼンカズラ@HOME 20XX/08/31(X) 19:29

やっと連絡先を交換できて、授業が夜間の日は家の近くまで送ってくようになった。だって親の送迎じゃなく電車で通ってるらしかったから。彼女は遠慮したけど、俺がちょっと強引に押した。

送るがてら寄り道したり、彼女の家の近所を探索するようになった。

そんなとき小さな神社を見つけた。彼女は気に入って、だいたいそこで話してから帰るようになった。

彼女は相変わらずだった。母親と折り合いが悪くて、妹は反抗期で、学校が嫌いで、雨はもっと嫌いで。

眼鏡が曇るから俺も雨は嫌いだって言ったら、伊達だってあっさり見破られた。眼鏡で顔隠してるんでしょって。

彼女の言う通りだった。

当時の俺は外見がコンプレックスだった。不健康なくらい色白で、どちらかと言えば女顔で、背も低ければ体形もひょろっとしてて。身長はどうにもならないから、せめて顔だけは隠したかったんだ。

見破られたことだし、彼女といるときは眼鏡を外すようにした。彼女の笑った顔をちゃんと見てたかったし。

夏が終わると、彼女はまた去って行った。でも前ほど寂しくはなかった。また来年の夏期講習に参加するつもりで、受験が終わるまで通うって聞いたから。

だから俺は、また一年間彼女を待った。〉

◇ ◇ ◇