どこに行こうか、決めていなかった。

 なのに足は自然と桜峰神社へ向かっていた。

 そこしか思い浮かばなかった。時生が作ってくれた、私のたったひとつの逃げ場。

 必ず呼ぶと約束したのに、時生に連絡はしなかった。

 いつも座っている石段に座った。

 あっという間に本降りになった雨は、残酷なまでに地面を叩きつけていた。

 全身びしょ濡れだった。

 氷みたいな水滴の束が、肌にまとわりついている服が、体温を容赦なく奪っていく。

 痙攣しているみたいに身体が震えていた。

 身体は強い方だけれど、さすがに風邪を引くことになるだろう。

 それどころか、下手をすれば凍死してしまいそうなほどの極寒。

 だけどそんなこと、もうどうでもよかった。

 全部どうでもよかった。

 雨が止まなければいいのに。

 このままずっと、私のことを隠し続けてくれたらいいのに。

 膝を立てて、顔を伏せて、眠るようにうずくまった。