なのに、あまりにもあっさり事故として処理された。
──なあ、逢坂。友達を疑うのはよくないぞ。
──間違いを認めることは勇気がいる。だけど、怖がらなくていいんだ。先生は怒ったりしない。みんなだって謝ればきっと許してくれる。混乱してたんだよな?
担任にそう言われたとき、頭のてっぺんからつま先にかけて、すーっとなにかが抜けていく感覚に襲われた。涙が出たわけでもないのに、目の前にいる担任の顔がよく見えなくなった。それを幻滅というのだとあとから知った。
結局私は主張を取り下げ、加害者であるリサたち──大人いわく〝運悪くぶつかってしまった生徒〟──の親からの上辺だけの謝罪と菓子折りで泣き寝入りさせられた。
私が大怪我を負ったことでさすがにやりすぎたと思ったのか、あるいはこれ以上はやばいと判断したのか、数ヶ月間に及ぶ直接的ないじめは突然幕を閉じた。
そして最終的に行き着いたのは、完全なる〝無視〟だった。
私はクラスから存在そのものを消された。
私はどうしようもなく愚かだった。小六の一件でなにも学んでいないのは私も同じだったのだ。
私なんか、なんの力もないちっぽけな存在で。いつだって、簡単に切り捨てられてしまう。その現実を突きつけられた。
あの地獄のような日々をもう一度味わうなんて、想像しただけで身震いした。
そしてようやく〝今の私〟が完成した。
世の中は平等じゃない。弱肉強食の世界だ。必ずある上下関係。逆らえば痛い目を見る。正義感を剥き出しにするよりも、自分を隠して、感情を殺して、長いものに巻かれて暮らしていくことが一番平和だと学んだ。それが世渡りというもの。
そう、それがうまく生きていく方法のはず。
なのに、どうしようもなく空っぽなのは、どうしようもない虚無感に襲われるのは、まるで毎日些細な犯罪でも犯しているかのような罪悪感に苛まれるのは、どうしてなのだろう。