リサとは、中学に入ってクラスが別れた。
正直ものすごく安心した。離れてまで嫌がらせをされることはない。私たちの世界はあくまでも〝教室〟だから。
他校からも進学してくるから、咲葵も含めて新しい友達もたくさんできた。特に一、二年の頃は本当に楽しかった。
だけどそんな日々も長くは続かなかった。
三年になると、狙い撃ちされたかのようにいつメンの中で私だけクラスが離れた。そして皮肉にも、新学期の教室にはリサがいた。
それでも最初は特に問題なく過ごしていた。ほとぼりが冷めたというわけじゃない。リサは私の存在を忘れてしまったかのように、私には一切興味を示さなかった。
だから私もそうした。二度と関わりたくないというのが本音だった。まるでふたりにしか見えない強固な壁があるみたいに、私たちはお互いの存在をなきものにしていた。
そんなある日だった。
「ねえ、みんなで打ち上げしようよ! 美桜も来るよね?」
体育祭が終わったあと、教室の中心で声を上げたのはリサだった。
同じクラスになってから声をかけられたのは初めてだった。
小六のあの日々が、そしてまた同じクラスになってからの二ヶ月間が丸ごと抜け落ちてしまったかのように私に笑顔を向けているリサに戸惑いを隠せなかった。
どう返そうか逡巡しながら教室を見渡した。
「それって全員誘ってるの?」
答えがわかった上で言ったことだった。教室の隅には息を殺すように俯いている子が何人かいたから。小学生の頃からなにひとつ変わっていないリサに、もう開いた口が塞がらなかった。
わかっていた。私が素直に「行く」と頷いていれば丸く収まると。
だけど私は、リサと離れていた二年間で取り戻してしまった幼稚な正義感と、リサに屈することなく半年間を過ごしたという勲章と、教室の外にも信頼できる友達がいるという強みがあった。
今ならリサと対等に戦える。そんな自信さえあった。
「打ち上げなのに全員に声かけないなんてどうかと思う。私そういうの嫌だから、行かないよ」
掴み合いの大喧嘩になった。
私が強気でいられたのは、その瞬間が最後だった。