私は止めた。このときはすでに正義感を振りかざしていたのかもしれない。
 私はいじめなんて嫌い。陰口だって言いたくない。みんなで仲良くしようよ。そんな幼稚な正義感。

 実際に私は、リサを仲間外れにしたりしなかった。リサが誰かの悪口を言えば止めたし、誰かがリサの悪口を言えば止めた。
 みんな、リサまでもが私の言うことを聞いてくれるようになった。クラスの中心みたいになれて、不動のリーダーだったリサを追い抜けたみたいで、いつしか浮かれてしまっていたのだと今はわかる。

 そして迎えた、出会ってから六回目のリサの誕生日。
 次の日から、私は急にクラスでひとりぼっちになった。

「なんでお誕生会来なかったの?」

 朝一番に訊かれた。
 腕を組んで仁王立ちしているリサの後ろには、クラスの女子ほとんどが加勢するみたいに立っていた。転校生の子までもが。

「誕生日をお祝いしないなんて、友達じゃないよね」
「美桜ってボシカテイじゃん。自分がお誕生会できないからってヒガんでたんじゃない?」
「美桜がそのつもりならいいよ。あたしだってそんな人と仲良くしたくないから」

 なんで来なかったのって、知らなかったからだ。
 誕生会の知らせはなかった。だから今年からはしないのだと思っていた。
 私だけが──今となってはクラスの中心的存在なのだと思っていた自分だけが誘われない可能性なんて、さらさら頭になかった。それがなによりの浮かれていた証拠だったと気づかされた。

 あとから知った話だけど、みんなこぞって誕生会に参加していた。
 リサもリサで、初めてみんなにちょっとしたプレゼントを用意していたらしい。当時大人気だったアイドルの、ちょっとレアなグッズ。
 六年間、仲良くしてくれてありがとう。中学校に行っても友達でいてね。
 そんなしおらしい言葉を添えて、賄賂を配ったわけだ。

 それからお開きの時間まで、お姫様の格好をしたリサをもてはやしていたそうだ。