リサとは小学校六年間、ずっと同じクラスだった。なんのことはない、私が通っていた小学校はたったの二クラスしかなかった。他にもずっと同じクラスだった子はたくさんいる。
お姫様みたいな子だった。お城みたいに大きな家の広いリビングにはグランドピアノが置いてあった。誕生日にはドレスを着て、テーブルいっぱいにご馳走が並ぶパーティーを開催していた。
誕生会には毎年、私も含めてクラスの女子のほとんどが誘われていた。
そんな華やかな場も、一度だけ崩壊しかけたことがある。
五年生のとき、ひとりの女の子が転校してきた。元気で明るくて、すぐにみんなと仲良くなった。もちろん誕生会にも誘われた。
そして当日、彼女がプレゼントとして持ってきたのは、コンビニに売っているおまけつきのお菓子だった。彼女の家はお世辞にも裕福とは言えなかったのだ。
それを受け取ったリサは驚愕していた。「あたしがこんなので喜ぶと思ってるの?」「バカにしてるの?」という目に他ならなかった。
当時は純粋にパーティーを楽しんでいたけれど、今ならわかる。誕生会は、主役であるリサをそれこそお姫様のようにもてはやすために用意されたステージだった。誘われていたのも、リサの取り巻きとして認められた、カースト中位以上の子たちだけだった。
だから、お姫様へのプレゼントがコンビニのお菓子なんて赦されるはずがなかった。
翌日から彼女は仲間外れにされた。先導していたのはもちろんリサ。
殴る蹴るといったわかりやすい暴力こそなかったものの、「貧乏人」「空気読めない」だのなんだのと陰口のオンパレードだった。
嫌だな、と思った。
別に正義感を振りかざしたかったわけじゃない。単純に、その転校生の子が好きだった。
こんなのいじめみたいで嫌だと言った私に、みんな賛同してくれた。すると今度は手のひらを返したようにリサの陰口を言うようになった。
「ドレスなんか着ちゃって、お姫様気取りだよね」
「五年生にもなってお誕生会なんて、子供みたいで恥ずかしいって思ってたんだよね」
「ねえ知ってる? リサのお父さんってフリンしてるらしいよ」