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雑居ビルを出て商店街を抜け、地下鉄に乗り、降りたのは高校の最寄り駅だった。改札をくぐり、高校を越え──たくらいで気づいてしまった。
時生が連れてきてくれたのは、昨日と同じ桜峰神社だった。よほどここが好きらしい。
今日もまた鳥居の前で一旦止まり、上を向きながらゆっくりと一歩踏み出す。まさか時生流のマナーなのだろうか。
昨日と同じく石段に並んで座り、ふと空を見上げた。さっきはビルに切り取られていた空が、木に囲まれて丸く切り取られていた。真ん中には、まるで私たちのあとを追ってきたみたいに月が浮かんでいた。
今はなぜか、窮屈そうには見えなかった。
あの月みたいに、私もいつか窮屈な場所から抜け出せるのだろうか。
そうは思えない。
「……ねえ、昨日訊いたよね。ほんとに友達なの、って」
「うん」
小さく深呼吸をした。
「世の中って、弱肉強食だと思わない?」
頭で本音、口で嘘ではなく──今出た台詞も、これから出てくる台詞も、きっと全部が本音。
時生のせいだ。
時生の目がまっすぐすぎるから、急に意味わかんないこと言ってきたりするから、こんな場所に連れてきたりするから。
──時生といると、調子が狂う。
「平等平等って言うけど、世の中は平等なんかじゃない。生まれ持っての強者と弱者がいる。例えば、容姿にも家柄にも全く恵まれなかった人が頂点に君臨してるところを見たことがある?」
それは学校生活という定められた空間ではなおさらそう。弱者がいきなり強者になろうとするのは困難だ。
ただひとつ、弱者は弱者なりに獲物にされることを回避する方法がある。
それは、強者の絶対的な味方でいること。一歩間違えれば地に落ちる。
それが学校生活というものだと、私は嫌になるくらい学んだ。
「小学生の頃にね、リサっていう、仲のいい女の子がいたの」
時生は空を見上げていた。私は話を続けた。
聞いてくれていると思ったし、聞いてなくてもいいと思った。