そうか。そんなに好きなんだ。
まるでドラマのワンシーンを観ているかのようにそう思った。
「どうしたのって、カラオケ集合じゃないの?」
永倉くんは小首を傾げて私たちを──咲葵を見た。
「そ、そうだけど、ずいぶん遅かったね。来ないと思ってた」
「日直だったし。まあ学校出てからも適当にぶらついてたけど」
かっこいいな、と思う。咲葵が隣にいるのに、つい見とれてしまう。
永倉くんは一年の頃は違うクラスだったけれど、確か秋くらいに転校してきたと記憶している。
そしてすぐに、咲葵とよく話しているのを見かけるようになった。咲葵の落とし物を永倉くんが拾ってくれたことがきっかけだったと聞いた。その流れで私も話すようになった。というか永倉くんが話しかけてくれるようになった。
その前から彼のことは知っていた。うちみたいに小さな学校では季節外れの転校生というだけで十二分に目立つのに、優れすぎている容姿で一躍有名人になった。ちょっとクールで群れないところにも憧れていた。
そう、永倉くんは圧倒的にかっこいい。〝かっこいい〟の集合体みたいに、とにかくかっこいい。
つまり咲葵と永倉くんなんてお似合い以外の何物でもない。ふたりが付き合えば、間違いなく公認のカップルになる。
三人の距離は均一なのに、まるで私だけ離れた場所からふたりを眺めているみたいだった。
「じゃあ三人でどっか行こうよ。美桜もまだ時間大丈夫だろ?」
カラオケにあと二時間耐えるのと、疎外感を感じながら咲葵と永倉くんが微笑み合っているところを見るのと、どっちが楽なんだろう。その答えを導き出す式なんて、きっとこの世のどこを探しても見つからない。
──いいな、咲葵は。
「あー……えっと、私はいいや。別にカラオケ嫌いじゃないし。じゃあまたね」
またドロドロの液体がせり上がってしまった私は、手を振って背中を向けた。