二の腕をさすりながらスマホを確認する。さすがにもう着信は切れていた。不在着信の表示をタップすると坂部(さかべ)からだった。中学一、二年生の頃のいつメンで、男子のリーダー的存在だった子。

「……中二、か」

 楽しかったな、と思う。
 当時の私たちのクラスはスクールカーストなど存在していなかった。他クラスや先生方からも仲がいいと評判だったし、私自身もそう思っていた。それこそ〝青春〟を具現化したような仲良しクラスだった。

 高校に入学したばかりの頃はたまに集まっていたけれど、最近は疎遠気味になっている。
 久しぶりに遊びの誘いだろうか。わくわくしながらかけ直した。

「もしもし。久しぶり。どうしたの?」
「最近みんなで集まってねえじゃん。久々にクラス会しねえ?」
「いいねえ。やろうやろう。女の子たちには私から声かけとくね」

 予想通りの内容に頬が緩む。
 私は一、二年の頃クラス委員長だったから、クラスでの集まりがあるときは率先して動いていた。その名残もあり、卒業した今でも女の子に声をかけるのは私の役目になっている。

「頼むな。男は俺から連絡しとくから」
「うん。わかった」

 通話を切る。
 じんわりと温まった胸に手を当てて踵を返そうとしたとき、

「美桜?」

 そこに立っていたのは咲葵だった。
 ちょうどよかった。咲葵も同じクラスだったから誘わなきゃいけない。

「あれ? 電話してたの? 帰ったんだと思ってた」
「咲葵は?」
「わたしも帰ろうと思って。最近カラオケばっかりで飽きたし」

 咲葵のことだから、それをそのまま蘭音たちにも伝えたのだろう。雰囲気や口調はふんわりしているけれど、芯が強く自分の意見はしっかりと口にする。そのギャップもまた人を惹きつける理由のひとつだった。
 こういうところはさすがだな、と思う。私には到底真似できないスキルだ。

 だけど、大丈夫だろうか。咲葵が帰ると言ったときの光景が目に浮かぶ。
 引き留める男の子たち。微笑みながらもきっぱりと交わす咲葵。そして蘭音の顔には思いっきり「不愉快」と書いてあったことだろう。
 空気読めない奴が一番嫌い。それもまた蘭音の口癖。