一文字一文字をしっかりと目に焼き付けるように、ゆっくりとスクロールしていく。

【俺らって過去に戻ってきたんじゃないの? なんかいろいろ違う。彼女も俺のこと忘れてる】

【俺も同じ。誰も俺のこと覚えてなかった。入学したときからずっといたのに転校生扱いになってるし】

【別の世界に来たってこと?】

【どうだろうな。けどそれにしては変わってないこともけっこうある。ていうか、俺らの存在がなかったことになってる以外はほとんど同じ。もしかしたら俺らが来たことで過去が少し変わったのかもしれない】

 四月十七日。

【手が透けてるんだけど】

【俺もそうだった。一回目は彼女のノートを拾ったとき。二回目はまさに今。たぶん告って付き合ったからだろうな。たぶん過去を大きく変えちゃだめなんだ。特に今は肘くらいまで透けててやばいかも】

【そっか。わかった】

【誰かにこんな手見られたらやばいし、学校は休めよ】

【おい、無視すんな】

【無視すんなっつーの。まさかその身体で学校行く気じゃないだろうな】

 四月十八日。

 朝、正門の前で蓮と会った日だ。

【なんで帰ったの?】

【こんなんで一日過ごせるかよ。誰かに見られたら大パニックだぞ。お前に忠告するために行っただけだよ。未読スルーしやがって】

【ポケットに手入れといたらいいじゃん】

【は? 一日中ずっとは無理だろ】

【俺はそうしてるけど。けっこういけるよ】

【……まあとにかく、身体が元に戻るまでしばらく離れた方がいい。立て続けに変えたらどうなるかわかんないぞ】

【どれくらいで戻る?】

【はっきりとはわかんないけど、一回目のときは二日くらいで元に戻ったし、今も昨日よりはちょっとずつ戻ってきてる】

【二日も離れてられるかよ】

【お前けっこう見かけによらず頑固だよな……】

 四月二十八日。

 北高の自殺騒動があった日。

【薄々思ってたんだけど、誰にも俺の姿見えてないみたい】

【俺もさすがにびっくりした。もうやめろ。過去を変えすぎてるんだ】

 四月二十九日。

【なんで学校来ないんだよ。お前まさか一緒にいるのか?】

【いるよ。彼女にだけ俺の姿見えてるみたいだし。なんで?】

【俺が知るかよ。つーかもうやめろって言っただろ。必要以上に関わるな】

【俺は彼女を助けるために来た。なにもしないままなんて絶対に嫌だ】