この世界に美桜がいない。

 ただそれだけなのに、俺の世界は壊れた。

 視界に映る全てが無色透明だった。

 毎日が無気力で、無機質だった。

 生きている意味が、生きていく意味が、わからなくなった。

 ただ息を吸って吐いているだけ。ただ心臓が動いているだけ。

 美桜を捜していた。夢の中でも、夢から覚めても、道を歩いているときも。

 どこにもいない。いるはずがない。そんなことは痛いほどわかっていた。

 それでも、美桜のことだけを捜し続けていた。

 たとえ夢の中でもいいから、美桜に会いたかった。

 全身が美桜だけを求めていた。

 生きているのか死んでいるのか自分でもわからないまま、月日だけが過ぎていった。

 そして俺は、美桜を置き去りにして大人になった。