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〈008:ノウゼンカズラ@HOME 20XX/08/31(X) 21:14
高校に入ると、もちろん彼女の姿があった。
クラスが違ったから話すことはなかった。まるで赤の他人みたいに一切関わらなかった。なぜなら俺が避けてたから。
ちょっとびっくりしたことが一つある。
学校が嫌いだって言ってたから友達が少ないタイプだと思ってたのに、彼女はいつも友達に囲まれてた。
考えてみたら当然だったんだよな。外見も中身も雰囲気も、全てにおいて典型的なヒロインタイプだから。
そしてある日の放課後、校内で一冊のノートが落ちてるのを見つけた。名前は書いてなかったけど、誰の物なのかはすぐにわかった。彼女がいつも塾で熱心に何かを書いていたノートだったから。
彼女の教室を覗いてみたら、もう帰ったみたいだった。だから彼女の机にノートを置いて帰った。
そして次の日から、なぜか彼女は一人で行動するようになってた。
あとあと噂が耳に入ったとき、背筋が凍ったよ。
彼女のノートには、クラスメイトの悪口が散々書かれてたらしい。
やっと彼女が言ってた「わたしのこと何も知らないでしょ」の意味がわかった。俺は彼女の上辺しか見てなかったんだ。
誰にだって裏の顔がある。俺はまだそれを知らなかった。
気づいたときにはもう完全に手遅れだった。〉
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