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〈007:ノウゼンカズラ@HOME 20XX/08/31(X) 20:37
受験が終わると同時に塾は辞めてたから、彼女に会うことはなかった。
日にちが経つにつれて落ち着いてくると、気づいたことが三つあった。
一つ目は、男が苦手な彼女が俺といてくれた理由。
それは特別だからじゃなく、単に俺が男っぽくなかったからだ。
二つ目は、彼女はたぶん俺の気持ちに気づいてた。
最初に感じてた壁は苦手な〝男〟に対する警戒だったのかもしれない。でも途中からは違ってた。
今の関係が心地いいから、言わないでね。
笑顔の奥で、そう訴えかけてたんだと思う。
三つめは、……俺も彼女がそう思ってることになんとなく気づいてた。
じゃあなんで告ったのかって、めちゃくちゃ好きだったから。それだけ。
壁なんか俺の勘違いで、彼女もきっと同じ気持ちでいてくれる。高校生活は一緒に過ごせる。そう信じようとしてた。
ただ彼女が言った「わたしのこと何も知らないでしょ」の意味は全然わかんなかった。振られたことより、そっちの方がよっぽどショックだった。
だって彼女のことはよく知ってると思ってたから。
可愛くて、笑顔が印象的で、ちっちゃくて、明るくて、お喋りで。
自分が一体彼女の何を見逃してたっていうんだ。
どれだけ考えても、全然わかんなかった。〉
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